救急車呼んでみた

僕は歯医者さんに行く途中だった。
寝坊して電車に間に合うかどうかギリギリで急いでいた。
近所の川辺で

「すいませーん」

と声がした。
その声のほうを見ると、細身のおじさんが座り込んでいる。

「すいません、あのー…救急車呼んでもらえます？」

「…はい？（゜Д゜）」

な、なんだと？（゜Д゜）
救急車？（゜Д゜）

「携帯あります？」

とりあえず近くに行って話を聞くと、どうやらチャリに乗ったまま石垣から落ちて足を痛めて動けないらしい。
意識もちゃんとあるし目立った外傷もなく、救急車呼ぶほど重症でもなさそうだが…動けないなら仕方ないな
もう確実に電車間に合わないと思いつつ携帯で119番。

「火事ですか？救急ですか？」

「救急です」

意外と冷静だった。
しかし場所を聞かれて困った。川しかない（´・ω・）

「えと…○○川の…なんて言ったらいいのかなぁ…○○川です」

困っている僕におじさんが助言。

「○○商店の…」

あぁ、そうだ。○○商店の近くだ。
更に電話の向こうからも助言。

「○○パークですか？」

「あ、そうですはい！」

そうだ、○○パークだここは…そんな名前だったな（´・ω・）
方向音痴に場所を尋ねることだけはしないほうがいい。

それから5分ほどで救急車が到着して、僕は解放された。
救急車を待っている間、どれくらいここで人が通るのを待っていたのか聞くと、よくわからないが数時間待ったそうだ。
僕が今日歯医者さんに行く日じゃなかったらこのおじさんは夕方犬の散歩で通る人か、下校する小中学生をひたすら待っていたことだろう…。

最寄り駅に到着して次の電車を確認すると、20分後だった。
乗るはずだった電車は10分前に行ってしまった。
あと10分早く家を出ていたら間に合ったかもしれない…まぁいいや。凄く清々しい気分だ。釣り動画だけど釣られてよかったと思える瞬間くらい清々しい。

電車を待つ間、ニートでも役に立てる時もあるんだなぁ…と考えていた。
意外と大丈夫なのかもしれない。考える前に飛び込めば必要とされることもあるのかもしれない。
なんだかおじさんのおかげで、少し…ほんの少し、堂々と歩けるような気がした。
俺、帰ったら教習所行くって親に言うんだ…


そして


歯医者さん、今日は麻酔をしないらしい


ひぎいいぃぃぃぃぃぃ
らめえぇぇぇそこ削っちゃらめえぇぇぇぇ
あ゛ああぁぁぁぁぁぁぁぁ